TMS(経頭蓋磁気刺激)について

当院ではTMSによる臨床研究 を行っています。

TMSとは?

TMS(Transcranial Magnetic Stimulation:経頭蓋磁気刺激)とは、磁気エネルギーを利用して、身体を傷つけることなく大脳皮質を刺激し、皮質や皮質下の性質や活動性を変化させる方法で、うつ病や慢性疼痛、幻聴など、様々な神経疾患に対処する、「ニューロモデュレーション(神経調節法)」という新たな治療法として注目されています。

2008年にアメリカで「薬物治療抵抗性うつ病」に対するTMS治療が認可されました。現在では、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ヨーロッパの国々で、うつ病に対する治療法として実践されています。一方、日本では、残念ながらまだ認可は得られていません。したがって、現在日本国内でTMSを受けるためには、各施設の臨床研究等に参加する必要があります。

当院では、TMS装置を2012年より導入しており、難治性※1のうつ病や慢性疼痛等の精神神経疾患に対する治療効果検証のために臨床研究を行っています。

※1:薬物療法において十分な量かつ長期に投与しても症状が改善しない状態

うつ病に対するTMS

うつ病に対するTMSは、これまで諸外国での研究においてその効果が数多く実証されています。当院では、難治性のうつ病に対して『rTMS(反復性経頭蓋磁気刺激)法』によるアプローチを行っています。うつ病では、左背外側前頭前野の機能が低下していると考えられており、同部位へのTMSによる抗うつ効果が期待されています。

rTMS法とは、大脳皮質の左-背外側前頭前野(DLPFC)と言われる場所(図1)に、1秒間に5~10回以上の高頻度で刺激する方法です。rTMS施行に要する時間は、1回あたり20分間程度で、それを合計20回行います(およそ4週間の期間)。

慢性疼痛に対するTMS

難治性の慢性疼痛に対するTMSについても、国内外の研究機関において、その鎮痛効果が検証されています。

慢性疼痛は持続する痛みによって、不安・抑うつ状態・行動意欲の低下・不眠などの精神・心理的症状を生じさせます。更に慢性疼痛は、患者の日常生活動作や生活の質の著しい低下、就労困難などももたらします。痛みに関する脳機能研究では、主観的な痛みと大脳皮質の前頭前野部との深い関与が示唆されており、同部位へのTMSによる鎮痛効果が期待されています。

慢性疼痛に対するTMS施行方法は、うつ病に対する場合と同様です。

TMSを受けるためには以下の条件が必要です

【うつ病の場合】

  1. 主治医の許可があり、自らの意志でTMSアプローチを希望される方
  2. 20歳以上の方
  3. 主診断が「大うつ病性障がい」(DSM-Ⅳ-TR)の方
  4. 薬剤を同時、もしくは継時的に投与されながらも、1年以上、抑うつ状態が長期にわたっている、もしくは再発を繰り返している方
  5. 15分以上の安静が保てる方

など

【慢性疼痛の場合】

  1. 主治医の許可があり、自らの意志でTMSアプローチを希望される方
  2. 20歳以上の方
  3. 身体的組織の損傷を伴わない慢性的な疼痛症状がある方

    ※疼痛の部位は問わない

    ※痛みによって就業や日常生活に支障をきたしている

    ※痛みの強さが主観的疼痛評価(NRS)にて5点以上(中等度以上の疼痛)である

  4. 薬剤投与による症状改善が認められず、疼痛症状が6ヶ月以上慢性化している方
  5. 15分以上の安静が保てる方

など

以下の方はTMSを受けられません

ペースメーカーや人工内耳(補聴器)、頭蓋内クリップ、インプラント等の金属製医療機器が体内に埋め込まれている方

てんかん、またはてんかん性発作の既往がある方

重篤な身体疾患に罹患している方

妊娠中またはその可能性がある方

希死念慮がある方

など

お問合せ

TMS臨床研究に興味をお持ちの方は主治医にご相談いただくか、下記の当院TMS窓口までお問合わせください。
なお、TMSアプローチを受けるには医師の診察と許可が必要です。お受けいただけない場合もありますのでご了承下さい。

松原病院 総合窓口

0776-22-3717

9:00~17:30[土日祝 休]

TMS窓口担当
看護師   小野田(おのだ)
理学療法士 宮地(みやじ)

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